築60年ほどの本格木造建築の、部分リフォーム事例をご紹介します。
長年、南向きの眺めの良い座敷や応接間はお客様をもてなすための空間として使われ、普段はほとんど使われていませんでした。ご家族は北側の台所兼居間で生活し、お母様は南東の和室、ご夫妻は2階で寝起きされていたそうです。また、天井の高いタイル張りのお風呂は、冬は特に寒く、冷たかったといいます。




リフォームのきっかけ:ライフスタイルの変化
そんなお屋敷で、ご高齢のお母様が亡くなられました。今後の来客は親しい親戚や友人たちが中心となるため、70代と80代のご夫妻は、この機会に南側の応接間と座敷をもっと使いやすく、せっかくの美しい庭を普段から眺めて暮らせる場所にしたいと考えるようになりました。さらに、タイル張りの寒いお風呂も暖かいお風呂に変えたいとのことで、私たちにご相談にいらっしゃいました。
お客様からのご要望
具体的なリフォームのご要望は、以下の4点でした。
- 自然素材の活用: 無垢の板、左官仕上げの壁、自然素材の天井にしたい。
- 南側空間の有効活用: 南側の庭に面した応接間と座敷を、普段使いのリビング、ダイニング、キッチンにしたい。
- 快適な浴室へ: 冷たく、硬く、寒いタイル張りのお風呂を、暖かく快適なものに変えたい。
- 玄関・廊下の改修: 傷んできた玄関ホールと廊下を無垢の床板に変えたい。
リフォームプランとこだわりの仕上げ
これらのご希望を今回のリフォームで実現するために、以下のようなプランと仕上げをご提案しました。
- 浴室: 既存の浴室を解体し、断熱性能に優れたユニットバスに造り替えました。
- 玄関ホール・廊下: **ナラの無垢板(自然系ワックス仕上げ)**に張り替え、温かみのある空間に。
南側空間(旧応接間・座敷)


- 旧座敷はダイニングキッチンとし、旧応接間は大きな開放的な窓に替えることで、座敷との段差を生かしつつ、明るいリビングへと変更しました。
- 旧座敷と広縁、床の間、仏壇、押入れを撤去し、柱・梁の補強により広々とした空間を創出。床の間や仏壇があった壁には風が抜ける小窓を設置しました。
- アイランドキッチンとダイニングを配置し、南の庭をカウンター越しに眺められる幅広で開放感のある窓を設置。この窓に向かって、コーヒータイムを楽しんだり、パソコンを広げたりできるブラックチェリーの無垢板カウンターを設けました。
旧応接間(新リビング)


- 旧応接間との床の段差は、既存の床框材と両引分け建具はそのままに、仕上げのみ新調しました。
- 既存床を解体し、床下に硬質系の高断熱材を敷き詰め、その上に直接、厚さ40mmの小国杉の無垢板を張りました。
- 壁は珪藻土塗り、天井には小国杉の無節の無垢板を仕上げに使用。窓は幅広の掃き出し窓に取り替え、庭との一体感を高めました。